排尿障害
前立腺肥大症
前立腺肥大症は、中高年男性によくみられる頻尿や尿勢低下などを主症状とした良性疾患です。
その有病率は高く、加齢とともに増加します。前立腺肥大症は、前立腺癌とは異なり生命に関係することはまれですが、排尿困難、頻尿、尿意切迫感、夜間頻尿などのために、生活の質(QOL: Quality of Life)に大きな影響を与える疾患です。症状の重症度に応じて様々な治療法があります。治療法については2017年に作成された男性下部尿路症状・前立腺肥大症診療ガイドラインで詳しく記載されているので詳細を知りたい方はそちらを参照してください。 当科では常に知識をアップデートし、最新の知見に基づき、薬物治療(α1遮断薬やPDE5阻害薬、5α還元酵素阻害薬など)や手術治療(経尿道的前立腺レーザー核出術)、生活習慣指導など、患者さんそれぞれに最も適したと考えられる治療法をおすすめします。
「尿の勢いが悪い」「尿がもれる」「尿が途中でとぎれる」「排尿に時間がかかる」「何度もトイレに行く」「排尿後も尿が残った感じがする」「夜中に何度もトイレに行く」。以上のような症状がある方は前立腺肥大症の可能性があります。
失禁(尿もれ)
排尿機能の専門外来を設置し(木曜日・午後)、尿失禁や排尿障害の検査と治療を行っております。専門外来では膀胱機能を正確に調べるための検査である、尿流動体検査(プレッシャーフロースタディ)を行っています。また、尿失禁に対する中部尿道スリング術(TOT手術)や人工尿道括約筋植え込み術も行っています。
1 概略
尿失禁(尿漏れ)は自分が排尿しようと思っていないときに尿が出てくる状態を言います。例えば、なわとびやジョギングをしているときに漏れるという人や、トイレに行こうとして間に合わずに漏れるという人がいます。漏れる量は人それぞれで、下着に少しつく程度の人から下着を1日に何回もはきかえる必要がある人までいます。尿失禁は女性に多く、女性の3人に1人が尿失禁を経験していると言われています。尿失禁は人に話しにくいことや、ある程度の年齢になれば仕方がないとあきらめることから病院を受診しない人も多いですが、実際は治療できる病気です。
尿失禁は、腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁、混合性尿失禁の3つに分けられます。腹圧性尿失禁はせきやくしゃみ、運動などで尿が漏れる状態を言います。切迫性尿失禁は尿がしたくなるとトイレまで間に合わず漏れてしまう状態を言います。混合性尿失禁は腹圧性と切迫性の両方が混在する状態を言います。
2 治療法
治療法は失禁の種類により異なります。
腹圧性尿失禁の場合、症状が軽ければ骨盤底筋体操や薬物治療で症状の改善が期待できます。症状が重い場合は手術治療(中部尿道スリング手術)で症状はかなり良くなります。また、前立腺がん手術後の腹圧性尿失禁に対しては人工尿道括約筋植込術を行っています。前立腺がん手術後に重症の尿失禁が持続している方の場合、人工尿道括約筋植込術により失禁量をかなり減らすことができます。前立腺がん手術後の尿失禁は時間経過とともに自然に回復しますが、2年以上持続する場合はそれ以上待っても自然回復は難しいことが分かっています。ですので前立腺がん手術後、重度の尿失禁が2年以上持続しているような方には人工尿道括約筋植込術をおすすめしています。
切迫性尿失禁の場合は、尿を我慢する習慣をつけていただく、コーヒーなどの刺激物を控えていただくなどの生活習慣の改善や抗コリン薬やβ3アドレナリン受容体作動薬といった薬物治療により症状改善が期待できます。