腎移植の流れ
ドナー(腎臓を提供していただく方)
生体腎ドナーの適応
腎提供できる条件
生体腎移植の場合、腎臓を提供してくれるご家族がいないと成り立ちません。しかし、ご家族なら誰でも生体ドナーになれるのではなくて、生体ドナーになるには下記の条件があります。
- 心身共に健康であること
- 成人であること(なるべく80歳以下であること)
- 患者さんと血縁、または夫婦であること
- 自分の意思で腎臓を提供したいと思っていること
- 腎機能が良好なこと
- 感染症がないこと
- 悪性腫瘍がないこと。または治癒していること
レシピエント | ドナー(一致又は適合する関係) |
---|---|
O型 | O型 |
A型 | A型 O型 |
B型 | B型 O型 |
AB型 | AB型 A型 B型 O型 |
血液型が不適合の場合も移植可能です。しかし、上記の組み合わせの場合に比べ、免疫抑制薬を投与する量が多くなるなど、通常の移植に加え、必要な処置が若干増えます。
- 組織適合性抗原(HLA抗原)が出来るだけ適合していることが望ましいが、適合していなくても提供は可能
- リンパ球交差試験(クロスマッチ)で陽性になれば移植不可
- 現在そして将来的に妊娠・出産する予定がないこと
- 心疾患・糖尿尿・高血圧・肝疾患などがある場合は、検討が必要
生体腎ドナー候補者の評価検査
生体ドナー候補の方が移植と提供についてそのリスクも含め、十分理解して納得し、提供を申し出られた後に、ドナーとして腎臓の提供が可能かどうかの評価検査を行います。
検査の内容は、腎機能の評価と組織適合性検査、一般的な全身状態の評価(悪性腫瘍や感染症などがないかどうかも含む)があります。また、適切な判断力を持って十分に移植及び提供について理解していることも確認します。
組織適合性検査
- HLAタイピング・クロスマッチ検査
(指定された日の朝8時30分に泌尿器科外来に来院し、採血を行う。患者と生体ドナー候補者は同日に来院する必要あり。)
全身状態の評価
- 血液検査(腎機能、肝機能、膵臓機能などの一般的な血液検査、腫瘍マーカー、HIVを含む感染症の検査など)
- 便検査(便の潜血反応)
- 喀痰検査(結核菌の有無)
- 胸部レントゲン
- 心電図
- 呼吸機能検査
- 腹部造影CT
- 糸球体ろ過量測定検査(GFR)
- 心エコー(高齢ドナーや既往歴による)
- 上部消化管内視鏡(年齢や既往歴による)
- 下部消化管内視鏡(便鮮血の結果、年齢、既往歴による)
- 麻酔科受診
- 精神科受診
上記の検査や受診以外にも、病歴や検査結果によってはさらに他の受診や検査を必要とすることもあります。
糸球体濾過量測定検査(GFR)について
糸球体濾過量とは、人の腎臓の糸球体で1分間に漉し出される液量のことです。腎臓の働きには多くのものがありますが、その中の最も基礎的なものが糸球体濾過量です。
腎機能の評価を行うには、クレアチニンなどが代表的ですが、クレアチニンは筋肉量に影響されてしまいます。糸球体濾過量測定検査を行うことによって、正確な腎機能の評価を行えます。
なぜ正確な腎機能の評価が必要なのか?
腎臓を1つ提供すれば、残りの1つで提供された方の何十年間かの人生を支えていかなければなりません。腎臓が1つになったときの影響を予測し、腎臓が1つになっても問題ないかどうかを確認するために、正確な腎機能の評価が必要となります。
検査方法
まず、検査の前に500mLの飲水をしていただき、採血をします。その後糸球体濾過量測定用の検査薬を点滴で投与します。投与30分後から、15分毎に飲水・採尿、採血を下記のように交互に行っていきます。
評価検査・提供手術までのながれ
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外来受診・生体腎移植・腎提供についての説明
(パンフレットや同意書を持ち帰り検討してもらう)
初回説明時、ご家族が同席していない場合は再度外来にて説明
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一般血液検査、胸腹部レントゲン、心電図
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外来検査・HLAタイピング・クロスマッチ検査
(患者、ドナー候補者一緒に採血) -
外来受診・一般血液検査等の検査結果説明
(検査結果問題ないなら)腹部造影CT予約申し込み -
1泊2日入院・糸球体ろ過量測定検査(専門病院に依頼)
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阪大病院以外で移植する場合、これ以降の検査はその病院で行う
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胸腹部造影CT検査、心エコー検査、便検査、喀痰検査提出
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レノグラム検査
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精神科受診(自発的意思の確認も含め)
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呼吸機能検査・麻酔科受診
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入院
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腎提供手術
検査の日程
生体ドナー候補者の評価検査は、基本的に外来で行っていきます。前のページに示したように、何回かに分けて外来で検査や受診を行います。検査結果で異常が見つかれば、さらに検査や他科受診などを行う必要が出てきます。
初回外来受診から、提供手術までは少なくとも3ヶ月程度はかかります。検査結果で異常が見つかったり、精査が必要になったりした場合には、それ以上かかる場合もあります。私たちのポリシーとして、生体ドナーが安全に手術を行えるように、十分な時間をかけて検査を行っています。
検査による危険性
腹部CT検査
腹部CT検査では腎内の血管の走行を調べるため、造影剤を使用しなければなりません。造影剤は、通常でも体に入ると全身が熱くなったり、尿をしたくなるような感じになったりします。しかし人によってはアレルギー反応を起こすことがあります。
アレルギー反応は造影剤を使用した直後~数日の間に起こり、多くは体に発疹が出たり、吐き気など気分が悪くなるなどの症状です。アレルギー反応の重いものでは、呼吸が苦しくなったり、ショック状態になったり、また心臓が止まることも10万人に1人とまれではありますが起こる可能性があります。
糸球体濾過量測定検査
検査薬を体内に点滴注入することによる影響ですが、平成14年から平成15年にかけて行われた治験の患者さん116例のうち、副作用は9例15件に認められましたが、特に治療を要するものはありませんでした。
(起こった副作用:頭痛、頭部不快感、水様便、皮疹、検査データの異常《白血球の減少・増加、好中球増加、肝機能の上昇、アミラーゼの上昇》)
手術の危険性に比べると軽度のようにも思われますが、ドナーにならなければこれらの検査を受ける必要はありませんので、ドナーになられると決心される時には、これらの危険性があることを了解した上で、提供するかどうかを決定してください。